インフルエンザウイルス感染症について
インフルエンザウイルス感染症はどんな病気?
インフルエンザウイルス感染症はインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で1-3)、日本では例年、12月~3月頃(1月末~2月上旬が流行のピーク)に流行することが多いです2,4)。インフルエンザの語源は、16世紀のイタリアの占星家たちがこの感染症を星や寒気の影響(influence:インフルエンス)だと考えたから、とされています5)。インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型、D型に大きく分類され、このうち流行を引き起こすのはA型とB型です4)。
感染経路
インフルエンザウイルス感染症は、主に、ウイルスをもっている人のせきやくしゃみなどで飛び散った小さな唾(つば)のしぶきを吸い込んで感染します(飛沫感染:ひまつかんせん)。また、ウイルスが付いた手指で口や鼻を触ることで感染することもあります(接触感染)2)。
どんな症状がでるの?
インフルエンザウイルスに感染してから症状が出るまでの期間は1~4日間(平均2日)とされています4)。38℃以上の発熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉痛・関節痛などがあらわれ、その後、せきや鼻水といった症状が出てきます。いわゆる“かぜ”に比べて、症状が重くなりやすいのが特徴です。多くは1週間程度で治っていきますが、子どもだと中耳炎や熱性けいれん、気管支喘息、子ども・大人ともに急性脳症、細菌感染症などを引き起こすことがあります2-4)。
気になる症状を相談できる診療科
【子ども】
かかりつけの小児科などに相談してみましょう。
【大人】
まず、かかりつけの内科などへの受診をご相談ください。
インフルエンザウイルス感染症ワクチンについて
ワクチンの役割
現在、国内で用いられている不活化(不活化ワクチンについてはこちら)および経鼻弱毒生ワクチンは、インフルエンザウイルス感染症の発症予防、重症化予防が期待できるとされています2-4)。
ワクチンを接種したいときの診療科
インフルエンザウイルス感染症が流行しているときは、多くの医療機関でインフルエンザウイルス感染症ワクチンを接種できます。ただ、在庫は変動しますので、電話にて在庫を確認してください。
【子ども】
小児科のある病院・クリニックなどの多くで接種できます。
【大人】
多くの診療科(内科など)で接種できます。
インフルエンザウイルス感染症を予防するワクチン
インフルエンザウイルス感染症ワクチンは、注射するタイプ(不活化ワクチン)と鼻の中にスプレーするタイプ(生ワクチン)があります1-2)。インフルエンザウイルス感染症ワクチンは、毎年、流行を予測したインフルエンザウイルスA/B型株に対応するようにつくられ、その効果は不活化ワクチンは2週間後から5ヵ月程度、生ワクチンは1年程度といわれています2)。そのため、重症化を防ぐためには毎年接種を行う必要があります2-4)。
定期/任意接種、接種費用、ワクチン接種のタイミング
定期接種は原則無料です。任意接種は費用(原則自己負担)がかかります(定期/任意接種についてはこちら)。
インフルエンザウイルス感染症は日本では例年、12月~3月頃に流行し、1月末~2月上旬に流行がピークとなるので、12月中旬頃までの接種が勧められています1-2)。
【子ども】
任意接種です。
- 注射するタイプ
- 生後6ヵ月~13歳未満:2回(毎年)1-3)
- 13歳以上:原則は1回(毎年)ですが、必要に応じて2回接種できます1-3,6)
- 鼻の中にスプレーするタイプ
- 2歳~19歳未満:1回(毎年)1-3)
【大人】
以下の条件に当てはまる人は、定期接種を受けられます3,7-8)。
定期接種は、注射するタイプのワクチンを使用します。

ワクチンの接種率
2022年度「定期の予防接種実施者数」(厚生労働省)によると、インフルエンザウイルス感染症ワクチンを定期接種した人の割合(実施率)は57.8%でした9)。
ワクチンの副反応
インフルエンザウイルス感染症ワクチンの主な副反応として接種部位の局所反応(赤み、はれや痛みなど)、発熱や頭痛、寒気、だるさなどがみられることがあります1)。また、インフルエンザウイルス感染症ワクチンは鶏の卵からつくられますが3-4)、米国では卵アレルギーを認める人でも通常接種ができるとされ、日本国内でも接種可能とされています3,4)。ただし、過去のインフルエンザウイルス感染症ワクチン接種の際に、実際にアナフィラキシーを認めた場合は、以後の接種はできません。そのほか、重い副反応として、ギラン・バレー症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(きゅうせいさんざいせいのうせきずいえん:脳や脊髄に炎症がおこる病気)、けいれん、肝機能障害、喘息発作、血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)などがあらわれることがあります1-4)。
- 1)厚生労働省:感染症情報 令和6年度インフルエンザQ&A(令和6年11月7日版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html 2025/8/1参照 - 2)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」:B-13 インフルエンザワクチン2024/10作成ver.2
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf 2025/8/1参照 - 3)予防接種ガイドライン等検討委員会執筆・監修:予防接種ガイドライン2025年度版 予防接種リサーチセンター:16-17・102-104・112-113,2025
- 4)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024.
- 5)国立国会図書館:レファレンス協同データベース レファレンス事例詳細 インフルエンザの語源について知りたい。
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&type=reference&id=1000290601&lsmp=1&rnk=1&st=ref_cnt_all 2025/8/1参照 - 6)日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2025年5月19日版
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250523_vaccine_schedule.pdf 2025/8/1参照 - 7)国立健康危機管理研究機構:日本の定期/任意予防接種スケジュール 2025年6月30日現在
https://id-info.jihs.go.jp/relevant/vaccine/topics/040/schedule.html 2025/8/1参照 - 8)厚生労働省:定期接種実施要領(令和7年3月31日改正)
https://www.mhlw.go.jp/content/001471610.pdf 2025/8/1参照 - 9)厚生労働省:定期の予防接種実施者数
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html 2025/8/1参照